2007年09月
このシアターは穴蔵のような雰囲気で、階段状の座席と、ステージ前の椅子を並べた席とがあります。どこに座っても、カフェの食事や飲み物を注文し、食べながら、呑みながらステージのショーを観ることができます。ワインやコーヒー、本格的にサラダや食事をしている人たちもいます。
私がミネアポリスに住み始めた頃(ものすごく昔)は、ここはハードコアなボウリング場と玉突き場(あえてそう呼びたい)だったのです。太い腕に入墨をして苦々しい表情をしたおっさんがバーカウンターとボウリングシューズの貸し出しをやっていたことを思い出します。今ステージのある空間は玉突き台がある部屋で、近所のちんぴらっていう感じの人たちが玉突きをする横で、パトロール中の警官が映画でよく観るように、無言で腕組みをして壁に寄りかかっているなんてことも見受けられたのです。
今やそんな雰囲気はどこにもありません。ファンキーでアーティスティックな芝居やパフォーマンスを観せるステージ、ワインやラテを片手にボウリングなんていう若者に人気のカジュアルな遊び場として定着しています。
で、お芝居。お馴染みのイギリス紳士が賭けをしてお供の使用人とともに80日間で世界を巡る冒険物語を、男性4人女性1人の俳優が60分間で演じるというショー。ステージ横には大きなデジタル式の時刻計が、60分から刻々と時間を経過させる中で、メインキャラクター以外は次々とすべての登場人物を5人が演じ分け、ストーリーを進行させていきます。3つの茶色いボックスだけが舞台装置。それが船になったり汽車になったり、象になったりとイマジネーションの中で変化していきます。パントマイム的な表現で情景を描き、小道具はターバン、ジャケット、帽子といったちょっとした衣装だけ。俳優たちは皆黒の上下を着て、そうした小物で人物に変化をつけていきます。めまぐるしくストーリーは進み、そんな中から笑いが沸き起こり、何と、きちんと60分過ぎるまでに芝居は完結しました。
少ない観客だったのにステージの熱気と元気さがシアターに充満し、私たちも思いっきり彼らのイマジネーションにひたることができました。有名俳優でもなく、お金をかけた舞台でもなく、ただ、彼らの演技と想像力、そして優れた演出が楽しい小一時間のエンターテイメントを生み出したのです。
そして、これが15ドル。おまけに抽選で友人は原作本をもらうというおまけ付き。私も「久しぶりにジュール・ベルヌを読んでみるかなぁ」と思いつつ、ほくほくとシアターを後にしました。カフェは遅めの食事を取る人、ちょっと一杯やっている人、ボウリング場のピンが倒れる音をバックに、とても賑わっていました。
www.bryantlakebowl.com
ところが意外に知られていないのが、中西部の紅葉。私は初めてミネソタに引っ越した年の秋の美しさを忘れることができません。「インディアンサマー」と呼ばれる季節外れの暖かい気候の数日でした。湖畔の木々の紅葉が湖面に映る様子や、白いケープコッドスタイルの家の前の高い木が鮮やかなオレンジ色に染まり、その10月はとても印象に残っています。(勿論ミネソタ生活最初だったせいもあるけれど。)
ミネアポリスやその近郊の紅葉は9月の終わりから10月の2週目くらい。ミネソタ州の北部では早い時には9月の2週目くらいから、そしてミシシッピ河畔を下がって行くと、南部は10月の半ば頃にピークになるようです。この時期には町々で「オクトーバーフェスト」が催され、人々の家の軒下には橙色の大きなかぼちゃが置かれ、ハロウィンの来るのを待ち受けています。週末にはコーヒーなど買って、ダウンタウンから約10分くらいにあるカルホーン湖やハリエット湖へ出かけ、湖畔を散歩しながら紅葉見物。車なら、ミシシッピ河畔沿いを南下するハイウェイをレッドウィングやウィノナという街々へ出かけて秋を楽しむのもなかなかです。
この季節に地ビールのある地元のバーなどへ行くと、「パンプキン風味」、「シナモン風味」といったちょっと凝ったビールなどを味わうこともできます。(ビール好きには不評ですが。)そして、焼きたてのパンプキンパイ、アップルパイ、ピーカンパイなどがデザートに似合うのが秋です。
9月の後半から10月の初めまで、セントポールやミネアポリスのミシシッピ・リバークルーズは「紅葉クルーズ」を売り物にしています。9月、10月は雨が多いのがたまにきずですが、ちょっと肌寒い河風を感じながらのリバークルーズには夏とは違った趣きがあります。
友人の家の庭にはテラコッタの暖炉があって、秋の夕刻にその暖炉の前で集まるのも楽しい過ごし方です。ちょっと寒いので、ブランケットやジャケットにくるまり、薪が燃えるぱちぱちいう音と独特の匂いをかいでいると、冬にむけて心が静かに移行していくようです。
バスやツアーで鑑賞するダイナミックな紅葉景色もいいですが、本当はどこか湖畔のリゾートのロッジに泊まり、さくさくと森の中を散歩したり湖にカヌーで漕ぎ出したりして、深まる秋をしみじみ楽しむ、そんな旅もお勧めしたいものです。
とはいえ「きちきち」の一人暮らしですから、当然そんなにファッション・アイテムにつぎ込める訳でもないのですが。それでもやはりこの制度は嬉しいものです。バーゲンでもこのタックスがかからないことで、ずいぶん得した気分になりますから。今年の夏のバーゲンではシーズンオフのドナルド・ペリニエーのスウェードのパンプスを70%オフ、コールハンの中型バッグを50%オフ、ハドソンのジーンズを40%オフ、アン・クラインのロングセーターを80%オフで購入しました。(嬉涙)こまめに探してお得なバーゲンを探すのがこつです。
さて、ファッションといえば、2、3年前からハリウッド女優等にも人気が急上昇し、ケイト・モスなどのモデルにも愛用されていて、最近ではヴォーグにも取り上げられ日本でもViViなどで紹介された「ミネトンカ・モカシン」というブランドのフリンジブーツや編み上げロングブーツ。このブランドが実はミネアポリス市街に本社があるとご存知の方は少ないと思います。ミネトンカというのはミネアポリスから30分くらいの郊外都市の名前でもあります。美しい湖畔を持つミネトンカ湖は郊外の憩いの場としても有名です。
ネイティブ・アメリカンのダコタ族の言葉「ミニ タンカ」から来ています。「大きな水」という意味だそうです。
そのネイティブ・アメリカンの命名した名前の「ミネトンカ・モカシン」はデザインもインディアン風モカシンを元にしたもので、昔からアメリカ人に地道に愛用されてきました。それが今やファッションアイテムの定番化していて、数年前の2~3倍の売れ行きだそうです。特にブーツは在庫切れ続出だそうで会社の方々も驚いているとのこと。「急にポピュラーになったよなぁ」と頭をかりかりかいておられると言います。
日本で購入すると1万円越えるようですが、こちらではブーツも60~70ドルの間で手に入ります。私は車を運転する女性等にはビーズ飾りのついたオリジナルのモカシンをお勧めします。快適で可愛いので、ちょっとご近所を運転するという時に車内専用にするといいんじゃないでしょうか。
その新館で私が一番気に入っているのが、美しい流線型の車「タトラT87セダン」です。ドイツの美術館などにもあるこの1930年代デザインの車は未来と過去が一体となった非常に扇情的なオブジェなのです。「タトラ」社は1800年代後半から続くチェコのディーゼルエンジン、トラック、列車車両の製造会社です。第二次世界大戦のドイツ軍などに愛用された悪路踏破能力と耐久性に優れた軍用トラックなどでも知られています。車の好きな人々にとっては1936年にタトラ社の前身コプレブニツェ社のハンス・レドヴィンカが完成させた小型乗用車の最高傑作「T87」は有名です。説明によく使われる「高性能流線型、リアエンジン」という用語が、古き良き時代の未来小説のようです。当時は最新技術であった「タトラT87」は最高速度160キロで走り、ナチス・ドイツにはアウトバーンに最適な車として絶賛され高級将校に愛用されたといいます。
ミネアポリス美術館のギャラリーに静かに鎮座し、完璧な流線型と輝く銀色の車体を惜しげなく見せるこのクラシックカーには、神々しいまでの威厳が感じられます。高貴で、そしてセクシーですらあります。アメリカ文学の巨匠スタインベックも愛用したそうです。また、当時この車で世界旅行をしたジャーナリストたちもいました。美しいデザインに加え、優れた耐久性はアフリカのジャングルへも人々を運んでいくことが出来たからです。
ロマンにあふれるロードトリップの数々を持つタトラT87。絵画や彫刻、史跡ではなく近代の発明機械であるというのに、美術的オブジェとして十分に印象的なのです。「美術」というのは美しい技術とも考えられる訳ですから、確かにタトラT87は、そこに過去の美しい技術を体現しているとも言えるでしょうか。
www.artsmia.org
ここは「ミネソタ州最初に町」と言われています。1843年にはじまった町はセントクロイ河畔では一番大きな町です。1800年代の家々が個人宅、または B&Bとして残され、町全体を懐古的で、フォークアートのようなムードにしています。
このスティルウォーターを初めて紅葉の季節に訪れたときの感動は今も忘れられません。確かに観光ピークで人々で賑わっていましたが、河に丘陵地帯の紅葉が鮮やかにリフレクトし、ビクトリア調の家々の屋根が木々の合間から覗く光景は、一挙に19世紀にタイムスリップしたようでした。鮮やかな橙と黄金色のハーモニーに紅の彩り、そして杉や白樺、やはり日本にはない景色です。
アンティークショップにはその後何度も通いました。北欧系移民が多かったため、デンマークやスウェーデンのアンティーク家具なども豊富で、今のインテリアにもお洒落に合わせられます。以前暮らしていた家のために、こうした店で購入した古い学校の科学実験室の木のテーブルと、しっかり作られた短い梯子を購入し、キッチンの改装時にアイランドと天井から吊るす鍋掛けにしました。
セントクロイの丘陵地帯ではミネソタ産の葡萄を育て、いくつかのワイナリーが
厳しい気候の変化でも美味しいワイン造りに頑張っています。スティルウォーターではそうしたワイナリーの地元産ワインをテイスティングすることも出来ます。
ホリデーシーズンはそのデコレーションなどもあって、また格別の雰囲気があります。歴史的な建物のツアーやホリデー・アフタヌーン・ティーなど催しもなかなかです。またちょっとしたクリスマスギフトをショッピングするにも最適です。
儚げなホリデーライトに雪でも積もっていればムードは最高です。
スティルウォーターへ行くバスのツアーもあります。半日を過ごすには良いと思います。www.metroconnections.com
今年もちょっと出かけて、あの鮮やかな木々の色が川面に映える美しい景色を観に行きたいものです。
ミネアポリスのダウンタウン、ニコレットモールに毎週木曜日立ち並ぶファーマーズ・マーケットも後約1ヶ月でシーズンを終えます。野菜の種類も晩夏のものになり、花の種類も変化しました。それでも地元産のトマトやタマネギ、様々な色のピーマン(白、黄色、濃い紫、真っ赤、オレンジとアメリカに来るまで緑のピーマンだけを買っていた!)などが約2ドル3ドルで山盛り購入することができます。ショウガやガーリックなどは3つで1ドルなんて値札も見受けられます。大きなキャベツの玉が1ドルだったり、束になったフレッシュなバジルが1ドルだったり、生活者にはとても嬉しいショッピングです。
滞在者には、地元産の蜂蜜、バッファローや鹿肉のジャーキーをお土産に購入したり、朝散策しながら、地元のベーカリーのデニッシュなどを朝ご飯にしたり、フルーツなどを購入してホテルで味わったり、そんなことをお薦めします。
昼頃にマーケットを散策するとビジネスピープルで一杯。ストリート・ミュージシャンがいたり、とても活き活きしていて歩くだけで楽しめます。
このニコレットモールのファーマーズ・マーケットが終わると、そろそろ寒くなるかなぁと感じるので、今は鮮やかなピーマンの色を眺めるだけでも、ありがたいものです。
チルドレンズ・シアター・カンパニーはミネアポリス美術館に隣接し、2006年には建築家マイケル・グレーブスのデザインによる拡張も終えて、活発に今年もシーズン上演中です。4、5才から楽しめる題材、ティーンエージャー向けの本格的なもの、誰もが楽しめるミュージカルなどバラエティにあふれる舞台を見せてくれます。出演する子供たちも立派な俳優で、カンパニーで訓練を受けた本格的な役者さんたちなのです。勿論子供だけが出演するのではなく、大人だけによる舞台もあるのですが。
カンパニーの持ちネタ「シンデレラ」は数年に一度、いつもクリスマスに上演される人気作ですが、華やかな舞台、ユーモアにあふれる演出や、客席内を歩き回る扮装した人たちがホリデームードを盛り上げ、家族全員が楽しめるようになっています。ショーが終わるとロビーにシンデレラと王子様が子供たちを歓迎し、ケーキが配られたりするという演出もあります。女性客にも人気のショーです。
英語が苦手という向きも、こうした子供向けの舞台だと楽しめると思います。難しい台詞や込み入ったストーリーが少ないものを選べば、十分本格的なシアターが楽しめるのです。
このシアターでは、ガラスで仕切った「むずかる赤ちゃんとお母さん」用の席というのも用意してあります。いかにもチルドレンズ・シアターらしい気配りです。また、企業の寄付によって、それぞれの作品上演中必ず一日は、「払えるだけ払って下さい」の日というのが設けられています。つまり、1ドルでも良い訳です。出来るだけ多くの子供たち、家族にシアター体験をして欲しいという企画の一つなのです。
家族連れ、学生さん、女性同士など多くの方にぜひお薦めしたいシアターです。
www.childrenstheatres.org

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